ニコチン(ドイツ語Nikotin)
「たばこの葉に含まれる有毒のアルカロイド」
フランス語nicotineから。1560年、フランスの外交官ニコ(J.Nicot)がポルトガル大使の時、たばこの
葉を都リスボンからフランス王妃カトリーヌ=ド=メディシス(Catherine de Medicis)に宛てて
贈ったことから「ニコの葉」(ラテン語herba nicotiana)と名付けた。
バイキング(英語viking)
「セルフ サービスで食べ放題の料理」
「8世紀から11世紀にスカンディナビア半島やユトランド半島を中心に住んでいたノルマン人のヴァイキング」
古代ノルド語vikingr「ビク湾に住む人」から。バイキング料理は北欧のスモーガスボード
(smorgasbord)「スカンディナビア風の前菜」に基づく。
バイブル(英語bible)
「聖書」
ギリシア語biblionの複数形bibliaに基づく。ビブロスはパピルス「羊皮紙の内皮」の意味で、
パピルスを船積みしたフェニキア人の港で都市国家の名ビブロス(Byblos)に基づく。
バザー(英語bazaar)
「慈善事業で行う展示即売会」
アラビア語のスーク「市場」のペルシア語訳。イラン人がイスラム化したため、ペルシア語の
bazar「市場」へ。デパートの特売場をバザール(フランス語bazzar「雑貨店」)というのも同じ語源。
パルチザン(フランス語partisan)
「ゲリラ隊。外国の侵略に抵抗するために自発的に民衆によって組織された武装集団」
ラテン語pars「部分」に基づき、partigiano「党派に属している人。ゲリラ隊員」から。
cf. 第二次世界大戦中、ユーゴスラヴィアのナチス=ドイツに対する抵抗組織が有名。
指導者ティトーは戦後、初代大統領に就任し、ソ連に対する独自路線を展開。
パレス(英語palace)
「宮殿。娯楽施設や競技場の呼び名」
ラテン語Palatium「パラティウムの丘」から、その丘にあった初代ローマ皇帝オクタヴィアヌス
(アウグストゥス)の宮殿を指すようになり、古代フランス語palais「宮殿」へ。
ハレム(英語halem)
「イスラム教国の王室・上流家庭の婦女室や閨房(夫婦の寝室。婦人の居間)」
アラブ語haram「不可侵の場所。女房の部屋」から。もとは「禁止された」の意味、
harama「禁止する」に基づく。
バロック(フランス語baroque)
「17世紀、18世紀にヨ−ロッパで流行の芸術様式(ルネサンス時代の均整のとれた静的様式に対して、
動的で壮大、細かい技巧の様式が特色)」
ポルトガル語barroca「いびつな真珠」から。イタリア語barocco「いびつな真珠」の意味はポルトガル
語からの借用。
バンガロー(英語bungalow)
「屋根の勾配がゆるい平屋建。高原やキャンプ用の小屋」
もとはインドのベンガル地方の民家に由来する。ヒンディー語bangla「ベンガル風の」から。
cf. キャンプ用の小屋の「バンガロー」は英語ではcabin、cottage。
ハンバーグ(英語Hambutg steak)
「ハンバーグステーキの略。ひき肉に、パン粉・玉葱・卵を加えフライパンで焼いた料理」
英語ではhamburgerという。ハンバーグは、ドイツの地名ハンブルクHamburgから。ステーキは、
焼肉にしたひき肉のこと。
ピース(英語peace)
「平和」
ラテン語pax「平和。協定。条約を結ぶこと」に基づき、古代フランス語pais
(後にpaixと綴る)「平和」から。印欧語pag−「しっかり固定する」から。
cf. ローマの全盛期はパックス=ロマーナ「ローマの平和(ローマによる、ローマのための平和)」
ファシズム(英語fascism)
「全体主義。イタリアのムッソリーニに統率された政治体制が最初」
ラテン語fascis「束。古代ローマで束ねた棒の中央に斧を入れて縛った権威標章で、コンスル(執政官、
統領)など高官の先駆であるliktorが棒持したもの」に基づき、イタリア語fascismo「ファシズム」はfascio
「束。政治結社」から。
プラチナ(スペイン語platina)
「白金」
16世紀にスペイン人が南米を征服。今のコロンビアのピント川で発見した。「小さな銀」の意味で
plata「銀」に基づく。もとはplatina del Pinto「ピント川の小さい銀」と呼ばれていた。
cf. ラプラタ川
フランク(英語frank)
「率直な。ざっくばらんな」
後期ラテン語Francus「フランク人」に基づき、古代フランス語franc「率直な。明らかな。自由な」から。
フランク王国では、自由民であったのはフランク族だけだったことから「自由な」の意味で用いた。
フリー・ランサー(英語free−lancer)
「自由契約者。映画・演劇などで特定の団体に所属していない俳優・歌手・司会者など」
lance「槍。槍騎兵」は、ラテン語lancea「槍」、古代フランス語lance「槍」から。それに基づく中世英語
free lanceは、「中世の傭兵」の意味。
ブルース(英語blues)
「アフリカン=アメリカン(アメリカ黒人)の間におこった哀調を帯びた歌曲(黒人霊歌・牧歌・民謡
を採り入れジャズの源といわれる)」
blue「憂欝な」から。黒人作曲家ハンディ(W.Ch.Handy,1873−1958)が各地の歌を採集して
ブルースと名付け出版したのが始まり。
ブルジョワ(フランス語bourgeois)
「市民階級。中産階級。中世ヨーロッパで商工業に従事した市民。資本家」
ゲルマン語burgs「城塞」、俗ラテン語burgus「城塞」に基づき、古代フランス語burgeis「解放された
都市の市民」から。
プロテスタント(英語Protestant)
「新教徒」
ラテン語protestari「抗議する」から。pro−「前に」とtestari「証言する」の構成。
16世紀、マルティン=ルターの宗教改革でローマ=カトリックに反抗して興った新しいキリスト教。
cf. 1529年、都ウィーンをオスマン=トルコ軍に包囲されたオーストリア(神聖ローマ帝国)皇帝
カール5世が、いったん承認したルター派の信仰を、トルコ軍の撤退後再禁止したことに抗議
の声をあげたという史実に基づく。
プロレタリア(ドイツ語Proletarier)
「無産階級。労働者階級。生産手段を持たず、労働力を提供する以外の生活の道のない階級」
ラテン語proletarius「(古代ローマで)子どもを提供するほか国家に貢献できない者」から。proles「子孫」
から。pro−「前に」とalere「養育する」の構成に基づく。
ペーパー(英語paper)
「紙。洋紙。書類。論文。原稿」
ギリシア語派パピルスpapyros「羊皮紙」の借用で、ラテン語papyrus「紙。パピルス」に基づく古代
フランス語papier「紙」から。
ヘクトパスカル(英語hectopascal)
「(気圧の単位。 100パスカル。hPa.)」
ヘクトはギリシア語hekaton「 100」( cf. パルティアの都、ヘカトンピュロスはギリシア語名で「百の」
の意)から。印欧語sem−「1」のギリシア語形heis「1」に基づく。hem−「1」とkaton「 100」の構成からか。
パスカルはフランスの哲学者・数学者・物理学者の名にちなむ。
cf. 1984年、世界気象機関(WHO)は、それまでのミリバ−ルに代わりに使用することを決めた。
ベンガラ(オランダ語Bengara)
「黄みの赤色顔料」
インド東部のベンガル地方に産する土の色に似ていることから、地名Bengalに由来する。京都の
旧家に見られる「紅殻格子」のベンガラは、塗料の名で同じ語源。
cf. パキスタンから独立した、今のバングラディシュの中心で語源がこのベンガル。
ボイコット(英語boycott)
「特定の勢力者を共同して排斥すること。労働争議における労働者側の戦術の一つ。不買運動。学生
の授業放棄」
1880年頃、小作人から排斥されたアイルランドの農業差配人ボイコット(Charles Cunningham
Boycott,1832−97)の名に基づく。
ホッチキス(英語hotchkiss)
「紙綴り機の一種。ホチキスやステープラー(外国ではこれ)ともいう」
アメリカの兵器発明家ホッチキス(Hochkiss,1826−85)の弟の名に基づく。なぜなら、兄の発明による
機関銃の副産物的な発明だったから。ちなみに、ホチキス機関銃の開発は1871年の出来事であり、それ以前の
手で回すガトリング砲(1862年、ガトリングが開発)はアメリカ南北戦争に使用され、それ以後の現在に至
るマキシム機関銃(1884年、マキシムが開発)はイギリスがその植民地拡大のための征服活動や南ア戦争
(ブール戦争)で、大量の先住民(ただし、ブール人はオランダ系白人の移民)に対して「効果的に」利用した
とされる。
ポリス(英語police)
「警察。警官。巡査」
ギリシア語politeia「都市国家(ポリスpolis)を統治する術」、後期ラテン語politia「国家。政府」に
基づく中世フランス語police「行政組織。政府」から。
cf. polis「都市」は印欧語pele−「城塞」から。
ボルテージ(英語voltage)
「電圧。電位差。内にこもる力」
イタリアの科学者A.ボルタの名前にちなむ命名で、英語volt「電圧」から。
ポロネーズ(フランス語polonaise)
「(16世紀頃、ポーランドに始まった舞曲。フランスに伝わり音楽の一形式として完成した)」
polonaise「ポーランドの」の意味から。ポーランド語でPoljane「ポーランド」のもとの意味は
「野原の住人」で、poleは「野原」の意。
cf.
19世紀ロマン派の音楽家ショパンのポロネーズが有名